精神疾患のある人が仕事をしていくための方法【社会福祉士監修】
精神疾患のある人が仕事をしていくための方法【社会福祉士監修】
あなたはこのような悩みを抱えてはいませんか?
・仕事を辞めるべきか悩んでいるけれど、相談することができない
・仕事に行けなくなってしまった
精神疾患を持つ方の中には、病状ゆえ仕事を探すことや、続けることが困難になる方もいます。ですが、適切な支援を受けることで思わぬ対処法が見つかることもあります。現在よりも、負担を減らして働くために受けられる支援について、この記事では解説していきます。
精神疾患とは
精神疾患とは、強いストレスを受けるなどの原因から、脳の働きが変化し、認知や感情、行動に偏りが見られる状態のことを指します。ここでは代表的な5つの精神疾患を見ていきます。
- 統合失調症
脳の何らかの働きにより、意欲が低下し、考えがまとまらなくなる、妄想や幻覚といった症状が見られる精神疾患。 - 気分障害(うつ病・双極性障害など)
気分の波が特徴的な症状として現れる疾患。 うつ状態のみの場合は、うつ病と呼ぶ。うつ状態と、気持ちが著しく高揚する躁状態を繰り返す場合には、双極性障害と呼ぶ。 - てんかん
何らかの原因で、一時的に脳の一部分が過剰に興奮することにより発作が起きる疾患。発作にはけいれんを伴うものや、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなどタイプは様々。 - 依存症
アルコールの摂取やギャンブルなど、ある行為を繰り返さないと満足できない状態になった結果、心身に障害が生じ、日常活動に支障をきたしている状態のこと。 - 高次脳機能障害
交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障害。感覚障害を伴う場合や、身体的には障害が残らないことも多く見られる。
また、高次機能障害や発達障害の特性から、生きづらさを感じ、二次障害として精神疾患が生じる場合もあります。精神疾患の主な治療方法としては、精神療法と薬物療法があります。
精神疾患のある方が仕事で感じやすい悩み
平成29年の厚生労働省職業安定局の報告によると、精神障害を持つ方の就職してから1年後の職場定着率は、その他の障害(身体・発達・知的)に比べて低い数値となっています。
発達障害・・・71.5%
知的障害・・・68.0%
身体障害・・・60.8%
精神障害・・・49.3%
精神疾患には、伝わりづらい(伝えづらい)障害特性があることも多いです。実際に精神疾患をお持ちで就労をしている方に、本記事では、「仕事で困難に感じていること」について、アンケートを採りました。
集計方法:ミルトーク
集計期間:8月19日・8月20日(2日間)
今回のアンケートでは、精神疾患をお持ちの方が「不安」を抱えながら働いていることが窺える結果となりました。
悩み事は以下の3つに分けることができます。
・仕事量についての悩み
・体調についての悩み
・周囲の理解についての悩み
アンケート内容について、詳しく確認していきます。
・仕事が忙しくなるとパニックになる
・仕事量が一度に増えるとパニックになってしまうこと
・忙しすぎるとセーブがしきれなくて結果的にバランスを崩してしまうことがあること
・プレッシャー・忙しさと自分とのバランスが取れない時がある
・今はだいぶいいけれど就職したてですべてを隠していた頃いっぺんにいろんなことを言われてパニックで薬を飲みたいのに飲めない!!とにかく爆発しそうな感情ととなりあわせでした。今はリズムがつかめてきたのでだいぶ楽だけど完璧主義が抜けきらず折り合いがつかない
・体調がよくないときや、ストレスがたまっているときなど、仕事中にパニック障害発作や過呼吸など少しおきそうになるときがある。
・日によって体調が大きく変わるため、毎日同じような仕事量がこなせない
・頑張り過ぎてしまう。いつも100%全力でやってしまい、心身共にバランスを崩してしまう。
・薬で眠い
・会社の人間のある一言や表情がトリガーになり過去の嫌な事を思い出してしまい、気持ちを抑えるのに、ものすごくエネルギーを使う事。
・周りの理解を得るのが難しい
・周りの人の理解が得られない、理解をしているふりをする人がいることです
・強迫性障害を患っています。なかなか症状の特性を理解してもらえない。
・一人で黙々と作業するのは苦ではないのだが、相手との交渉ごとや相手が何を考えているのか読みながらの行動はとても苦痛。それをわがままだと思われそうでつらい。
・仕事しても続かない。すぐやめてしまう。
精神疾患を持つの方の中には、ストレスから疲れを溜め込む方も、多いようです。そのため、定期的に相談ができる人を見つけておくと安心です。通院をしている方であれば、主治医や病院に所属するカウンセラーや精神保健福祉士などに話をする機会があると望ましいでしょう。
精神疾患が原因で悩んでいる方が【今できること】
仕事をする中で、下記のような場合には、どのようなことに気を付けると良いのでしょうか?
・ストレスから疲れを溜め込みやすい
・気分に波がある
・そもそも疾患を伏せて仕事をしている
ポイント1 基本的には主治医の判断に従う
仕事を続ける際に生じる悩み事について、普段からあなたを診察している主治医に判断を仰ぎましょう。休職や復職の過程にある方は、そのタイミングも重要になります。 主治医に話すことが難しいという方は、勤務先の産業医に相談することも検討してみてください。
会社に産業医がいる場合は、相談できる
常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、事業者は、産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならないこととなっています。 いきなり会社に聞くのは勇気がいる…という方は、会社の健康診断などで相談をしてみるのも一つの方法です。
ポイント2 定期的に相談ができる機関もある
もしも、メールや電話、対面での相談をしたい場合には、下記のような機関を頼ることもできます。
お住まいの都道府県に精神保健センターがある場合には、利用することができます。
◆働く人の「こころの耳電話相談」/「こころの耳メール相談」厚生労働省が行なっている相談事業です。
仕事をしている方や人事労務担当者などからの心の健康相談を受け付けています。
必要に応じて、これらの機関を利用することも視野に入れることができるといいですね。
ポイント3 規則正しい生活リズムと休養
日々ストレスを多く感じていると、生活のリズムが不規則になってくることがあります。眠れない、食欲がない、昼夜が逆転している、などの例が挙げられます。体調によっては、体力が普段よりも落ちている、と感じる方も多いでしょう。
そのような時には、生活にリズムをつけてみてください。昼間に眠ってしまうことや、ゆっくりと過ごすことが多い方は、毎日どこかに通うという方法も有効です。通う場所があることによって、次第に生活リズムが改善されるケースもあります。
ただし、一つ注意点があるとすれば、これは自分が生きやすくするためのコツであり、無理をして体調を悪化させてしまうというのは本末転倒だということです。 主治医やソーシャルワーカーと相談しながら、自分の負担にならない程度の活動から始められるといいですね。
ポイント4 ストレスの受け取り方を変えてみる
また、自分の体調にストレスが関係していると思ったならば、そのストレスへの対処法を考えてみるのも一つの方法です。 ストレスを感じる出来事自体を変えることはできなくても、実は、それをどう受け取るかは自分で選ぶことができます。 興味のある方は、認知行動療法で検索してみてくださいね。
ポイント5 体調が不安定な時には休職制度もある
どうしても仕事を続けていくことが難しい、となった場合には、会社や主治医と相談のもとに、休職制度を利用することもできます。 精神疾患の中には、判断力の低下が見られるものもあり、そのため、仕事を辞めることを決して1人では決めないほうが良いでしょう。 体調を整えて復職する選択肢、雇用枠の変更を想定しての転職などを考える際には、隣に誰かがいる方が安心ですよね。 休職制度については、各事業者によって給与の取り扱いや、期限などが変わります。もしも利用したい場合は、勤務先の人事担当者などに質問することもできます。
ポイント6 就労移行支援施設でもリワークが利用できる
休職中や、転職活動中に心強い味方となるのが、就労移行支援事業所です。 就労移行支援事業所には、復職までのサポートをしてくれるリワーク事業を行なっている所もあります。 就労移行支援事業所について詳しく知りたい、という方は下の記事を併せてご参照頂けるとわかりやすいと思います。
就労移行とは?利用料は?どんなことをするの?
まとめ
精神疾患をお持ちの方が仕事についての悩みを相談できる場所は多くあります。復職の判断などは医師やサポーターの意見に耳を傾けながら、行っていきましょう。
編集後記
筆者は長い間、埼玉県の精神保健センター「こころの健康センター」にお世話になっていました。スタッフの方に面談をお願いしていたことを思い出しながら、この記事を書きました。休職を経て、筆者は現在、就労移行支援事業所チャレジョブセンター浦和に通いながら就労を目指しています。この記事も、WEB記事の製作訓練の一環として書かせていただきました。スタッフの皆さんが親身になってサポートしてくださるので、安心しながら訓練に励むことができます。
施設長からあなたへ
就労移行支援事業所チャレジョブセンターでは、職業相談も受け付けております。
もしも、あなたが就職について1人で悩んでいるようであれば、お気持ちを聞かせてください。
力になることができるか、一緒に考えたいと思っています。
また、事業所ブログでは普段のセンターの様子が分かりますので、気になった方はチェックしてみてくださいね。
監修 社会福祉士
就労移行支援事業所チャレジョブセンター浦和 施設長
金井塚ナユ太
執筆・編集 利用者J
コーディング 利用者Y